2008.4.11の日記から


最近、チラ見したNHKの番組が印象的だったので、紹介します。番組は、途中から見たので、全体は把握してません。

作家の宮本輝さんがインタビューに答えてました。
宮本輝さんは、私の恩師が好きな作家です。
宮本輝さんは、普通に会社員として働いていた時に、
ある有名大作家の短編集を古本屋で読んで、
これなら僕でも書けると作家に転身した人らしいです。

その宮本輝さん、ある作品を書き上げた際に、作家の池波正太郎先生に読んで貰ったそうです。

読み終わった池波先生から、電話が!

池波「君、きみは天才や!天才やで~」
宮本「あっはい!?」
池波「今度ちょっと家に来なさい」

早速、宮本輝さんは池波先生の家に行きました。

池波「君は天才や!こんな作品が書けるなんて、天才やで」
宮本「ありがとうございます」

池波先生は、さんざんほめ倒した後、

池波「でもな、宮本くん、この最初の書き出しから途中のここまで、いらんなぁ」
と言って、原稿に赤ペンでバツをした。

宮本「何するんですか!そこは、一番時間かけたとこですよ」
池波「ここがなかったら、もっと印象深い作品になんねん」
宮本「納得出来ません。原稿返して下さい。帰ります」
と宮本輝さんは帰ったそうです。


怒り心頭で帰宅した宮本輝さん。
2、3日、腹がたってしょうがなかったそうです。最初の書き出しから、池波先生が要らないとしたその途中までは、宮本輝さんがその作品で一番時間をかけて書いた部分だから、余計に池波先生の指摘に納得出来なかったとのこと。
しかし、気持ちが落ち着くにつれ、改めて、池波先生が要らないといった部分を除いて、読んでみた。

そして、宮本輝さんは、池波先生に電話して、お家に伺いたいと言った。

宮本輝さんは、池波先生に、
「先生、僕が間違ってました。改めて読んでみたら、この部分がない方がいいです。」
と言った。
池波先生は、
「宮本くん、この国に作家と呼ばれる人が何人いると思う?何十万、何百万か分からないよ。
でもね、この要らない部分を省いて、この書き出しから書ける人が、作家としてやっていけるんだよ」
と言った。


宮本輝さんは、この作品「泥の河」で、第13回太宰治賞を受賞した。



久しぶりに、NHKでいい番組を観たと思った。