久しぶりに、いちフロントスタッフとして働いたら、

これが俺の宿命なのかと
思われるくらい

てんやわんやの嵐。


昔から、なぜか
しんどい仕事か
めんどくさい仕事か
忙しい仕事は
俺の所に回ってくる。

えらい目にあった。



昼スタッフからバトンタッチを受けて、引き継ぎも終わり、

一息ついたところで、

周りを見渡すと、

店には、俺一人しかいない。

なんだ、一人かぁ…

と思って、
うんこしたくなって
トイレに行った。



爽やかな気持ちになるために
さぁ、うんこしようと、
パンツとズボンを下げ、
ブリっと一発かますと
お客様からけたたましく電話が!!



あちゃー、トイレから固定電話まで遠いなぁ



うわっ!
どぅしよっ

とあせって
トイレットペーパー素早くまくろうとしたら、今度は、
女の子のアウト時間15分前のタイマーが激しく鳴り始めたのが聞こえた。


ピピピ、ピピピ、ピピピ!



うわっ!
はよ電話せな
女の子怒るやん!!

そこに、
ドライバーさんからの
到着電話が
鳴りはじめた!


ツルゥツルゥツルツルツルツルツルツル!



さらに、ズボンの中から自分の携帯がガンガン鳴りはじめた。



こんな時に
どいつもこいつも
同時に一気にかけてきやがって
と怒りつつ
ズボンのポケットをまさぐっていると、



さっき、頼んだ出前の弁当が到着したのか
玄関のインターホンが

ピンポーンピンポーンピンポーン

ひゃあ、

おしっこが止まらない。

うんこもまだ、残糞感がビミョーにある。

急いで引っ張ったせいか、
トイレットペーパーが、トイレットペーパー置きから外れて
床に転がり、追いかけると、
おしっこがズボンにかかり、

やっ!

と便座に座り直すと、
体内のうんこが脱出しはじめ、

便座から離れられない。

悪いことは重なるもので、
別回線のお客様の電話が
新たに鳴り始め、

とにかく早く
電話取らないと!

とさらに、あせる。

少し待てばよいのに、
弁当屋のバカが
玄関のインターホンを
ピンポーンピンポーンと元気よく鳴らす。


どぅして俺ひとりになると、
こんな目にいつもあうのかなと
悲劇の自分を嘆く。


とにかく落ち着け!
と自分に言いきかすも

何から始めていいのか
分からない。


お尻をふいて外を出ようにも
トイレットペーパーが赤じゅうたんのようにトイレ内を転がっていて
巻かないとすべての行動がスタートしない。



あぁ、何から始めたら
いいのか優先順位がつけられない。仕事できない人になってる!



馬鹿だから、
あせってるはずなのに、
のんきに
ウォシュレットのボタンなんか
押してしまった。


あかん!
けつ、洗ってる場合ちゃうわ!
と腰を浮かしたら、
安全装置が働くはずの
ウォシュレットが、まだ、


ビューッと出てる!!


体重がかからなかったら
水が出ない設定のはずなのに
安全装置が働いてない!


さすがに、
二万円で買ったウォシュレットは違う!
安物じゃのぅなんて感心しつつ


とにかく、
水止めな!
と振り返ったら、
顔面にウォシュレットの水が!


やぁー!!



顔ビショビショになりながら、
水止めて、
トイレから出ようとすると、
足に先ほど下ろしたズボンとパンツがからまり、

体ごとドタっと、こけた。


痛っ!


でかい声で叫んでも
誰も助けにきてくれへん

とにかく玄関がうるさいから、
ポケットの財布から1000円取り出して、
ちんちん左手で隠しつつ、
ドアを右手で開けて
弁当屋に投げつけた。



弁当屋もびっくりした顔してたが、とっさに緊急事態を察知したのか、
黙って
おつりと弁当を渡してくる



弁当とおつりを玄関に置いたまま、
事務所にたどり着くと、

電話がやみ、タイマーも止まった。


はっと我にかえると、
ちんちんを露出したままで
ぼーっと
立っている自分がいた。



情けない…



誰にも見られていないのが
不幸中の幸いだった。



その夜、
なぜか
ブラックダイヤモンドをつかむ夢を見た。



案外、
馬鹿は馬鹿なりに
幸せなのかもしれない